天神楽の鳴き声
いつの間にか、どの場所さえも生きづらくなっていた。
それぞれ選択をした、だから、今がある。

『お願い、游。こんなこと、游にしか頼めない、私と生雪の子をおねがい…!!』

まだ目立たない日生の腹には雛生が宿っていた。

日生は稀代の素晴らしい術者だった。彼女は確かにお尋ね者だった、雛生が理解している理由とは別の理由で。

寒い冬の日、日生は必死の思いで游のもとを訪れた。天神楽の宮にいる游を訪ねることは危険だった。日生は生雪を失ったことで精神的にぼろぼろだった。
游は天神楽から見えないように日生を匿い、そして出産させた。
日生の産み落とした生き物を見て、愕然とした。普通とは桁違いの霊力を持った赤子。そんな莫大な霊力はまわりだけではなく、自身さえも滅ぼす危険性を孕んでいた。 出産で弱った体に鞭を打ち、日生は霊力の半分を雛生からとりだし、もう半分の霊力は雛生自身の中に封印した。

『どうするつもり?』
『アテがあるの、でも、私はもう戻れないから、雛生をよろしく』

そういって、雪の中を消えていった。游はそれ以来、日生を見ていない。

何故だか、泣きそうだった。

罰を受けるべきは私だー…

ー…
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