天神楽の鳴き声
「…なっ…なぜ、そこで、おれに振る?…空平(アキヒラ)」

そして、おろおろとした気弱な声。

話を振られわたわたと戸惑う男こそ雛生の夫である、帝の志臣(シオミ)だ。その隣にいるのが志臣の近衛武官、志臣だ。空平は、薄青の長髪は女子が羨みそうになるほどさらさらで、それを一つに結っていて、瞳は濃い瑠璃色、男にしておくのが勿体無いほど綺麗な顔立ちをしている。

一方、少しだけ柔らかな小麦色の髪は頼りなさを象徴するようにハね、緋色の目は困ったようにおろおろと動く、顔立ちは、空平とひけをとらないほど、綺麗ではあるが、
相も変わらず。

雛生は思わずため息をついてしまう。みてくれと図体ばかり立派なくせに、どうしてこうなのか。

「志臣、公務は終わったの?」
「うんっ…雛に会いたくて…頑張って公務早く終わらせたんだよー」

雛生に話しかけられたのが嬉しいのか、きらきらと目を輝かせてあのね、あのね、と話す。
その様子を見るとなんだか腹立たしくなってしまう。

てめぇは、

「犬か!?…帝なら帝らしくしゃっきりなさい!!」

「むりー、帝らしくなら外で散々振る舞ってるから」

嫌々とばかりに可愛らしく首をふる。そんな様子を見ると、私より女子力高いんじゃないの?と思うくらい可愛らしい。
悪く言えば女々しい。
ぺぺぺ、と明乎を雛生から剥がすと、自分の物と主張するかのように抱きつく。

「邪魔くさい」

「犬同然ですなー、主上。うれしっすか?」
「五月蝿い、愛はきっと無限大」
「主上ってば楽天家ーっ」
「明乎、主上にそんな言葉遣い…」


帝の威厳はどこへやら。
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