天神楽の鳴き声
雛生は両親が大罪人、胡兎の両親は他界していたため売り出されていたのだ。子供だけでやっていけるほど、この国は豊かではなく、愛情を語る大人は居なかった。

「喜びな、妓楼や奴隷には売らないでやるから、…天神楽の宮に必要な人数たりないんだとよ」

人買いの男はそんなことを言った。子供たちは妓楼や奴隷に売られないという事実に喜んだ。もちろん、雛生や胡兎もそのうちの一人だった。宮仕えの方が楽、そして、ハクがつくという、単純な演算の結果ゆえだった。

外から宮に入るには、一つの門しかなく、まるで外とのつながりを遮断しているような鉄壁の壁が連なるのが見え幼心に不安になった。

「だいじょうぶかなぁ…おれ、こわいよ」

小さい、雛生よりも幼い男の子が半べそかいていたので、最悪の状態は免れたのよ、と教えてやったりもした。

そう、最悪の状態は免れたのだと、思っていた。


「さぁ、門に入れ、俺はここまでしか入れんから、」

門が重そうな音をたて、開く。後できた話によると、十人で開く門だったらしい。
先は全く見えなく、不安が黒く広がっていく。迷っていても、ここ以外に行く場所のない雛生達は一歩踏み出す。
さわさわという感覚が体を這いずり回る。

まるで、品定め、されてるみたい。
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