天神楽の鳴き声
「雛の行方は」
「まだ、掴めていないようです…、白官たちが手を尽くしていますが…」


志臣の問いに莉津は目を伏せながら答える。
雛生の居ない彗由宮は変わらずゆるやかに時が流れている。

「高位の白官たちしか使えないような術がかかっていたそうです…。でも、あの術は外部からのものらしいですよ」
「外部…、色落(シキラク)ってことかな?」


色落とは天神楽の宮で、身分を表す色を剥奪されるという意味だ。
基本、この宮は、一度入っては出られないが、いくつか定めてある掟を破ってしまうと色落とされ、宮からの追放を意味する。

「そうですね、…掟には幾つかありますが、最たるものといえば、外の方々と深く関わりすぎてしまった場合、それ以上の関係になってしまった場合、色落の通達が届くらしいですよ?」

天神楽に気に入られる、ということは、いつか、最も熟した時期に喰われる、そういうことを意味する。

一般的に、還る、という。宮での行いがよく、信心深い者が最期に天神楽に喰われる。
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