天神楽の鳴き声
「色落とされると、この宮の事での全ての記憶を返上して…外の、どこかの村に返される、そう聞きました、だから、色落の行いだとしても、無理なんですよ」
「じゃあ、どうやって、」
「わからないです…。明乎が、宮を出て探しに行ってくれているらしいですが…」
そうか、とだけ呟いて、長く息を吐く。志臣はわかりすぎるくらいに落ち込んでいる。雛生を大事に想っていることが痛いくらいにわかる。
莉津は志臣に聞いた。
「泣かないんですね?」
「ん?」
「あ、姉に、主上ほど泣き虫な殿方は見たことがないとよく聞いたものなので…」
そういうと、志臣はあー、と情けなく声を出した。
「花梨がいったんだな。…おれは、決めてることがあるんだ」
少し決まり悪そうな顔をしたあと、子供のように頼りなく、無知で無邪気な笑い方をした。
久しぶりに他人の口から自分の姉の名を聞くと、少し前、彼女は確かに自分と一緒に暮らしていた、そんな不可思議な実感が生まれる。
莉津は志臣の言葉に耳を傾けた。
「じゃあ、どうやって、」
「わからないです…。明乎が、宮を出て探しに行ってくれているらしいですが…」
そうか、とだけ呟いて、長く息を吐く。志臣はわかりすぎるくらいに落ち込んでいる。雛生を大事に想っていることが痛いくらいにわかる。
莉津は志臣に聞いた。
「泣かないんですね?」
「ん?」
「あ、姉に、主上ほど泣き虫な殿方は見たことがないとよく聞いたものなので…」
そういうと、志臣はあー、と情けなく声を出した。
「花梨がいったんだな。…おれは、決めてることがあるんだ」
少し決まり悪そうな顔をしたあと、子供のように頼りなく、無知で無邪気な笑い方をした。
久しぶりに他人の口から自分の姉の名を聞くと、少し前、彼女は確かに自分と一緒に暮らしていた、そんな不可思議な実感が生まれる。
莉津は志臣の言葉に耳を傾けた。