天神楽の鳴き声

「そういうことは雛生さまにして差し上げて下さい」

「うん、莉津は空平にしてもらいなよ。」

志臣のその言葉に笑いながら、莉津は思う。

甘えちゃいけない。
自分の為に用意されている手などないのだ。志臣の手はあの愛らしい雛生の為に、空平の手は、

きっと―…


「主上、主上は雛生さまの何になりたいんですか？」
雛生にべったりの志臣に聞く。人差し指を立て、莉津は微笑んだ。

「一つ助言を申し上げますと、闇雲に歩き回ったって良いのですよ。」
「闇雲？」
「ええ。自分勝手に動いたっていいんです。主上は抱え込んで動けなくなりすぎですよ。少しずつ一緒に持ってあげればいいんです。」


「むずかしいな」
「そうですねー。でも頭の横隅にでも置いといてくださいよ。」

志臣は眉をハの字にして困り顔をする。
大多数の知らない人間よりも少数の大切な人が幸せであればいい。

例えそれが罪となることでも、祈り、捧げる、そんなことより、自分勝手に幸せであってほしい。

それは傲慢なわたしの願い。


―…