天神楽の鳴き声
「名前は?俺は苳熹(トウキ)」
「雛生、よろしく」

苳熹はどかっと店の横に座る、それにならって雛生も座る。苳熹は色んな所で、探している子を見つけようとしているが、全く掴めない、という。

「何年もたってるんじゃあ、苳熹もわからないんじゃない?」
「いやいやあ、これがわかんだよなあ、心臓が繋がりあった人間だかんな」
「は?心臓、なにそれきもい」
「重要なことなんだぜ、刻まれた宿命には逆らえねえっつーだろ?俺はそーゆーヤツを探してんだ」

苳熹の着物の腕からちらりと入れ墨が覗く、折れた月に楔というなんとも禍々しいものだった。
そういえば、入れ墨には、きちんと意味があるらしい、聞いてみると、おまえ、ほんっと無知だなあ、と馬鹿にされる。

「これはあんまでけえ声では言えねえけど、無法者の集団の証だ。だからあんまいいもんじゃねえ。あ、探してるヤツにもあるはずなんだけど」

一通り話していると、雛ちゃーんと彰綺さんの呼ぶ声がした。苳熹があれがお前のツレか?と聞き、雛生が頷くと、じゃあなと立ち上がる。

「とおりーん」
「うお!」
すごい勢いで苳熹に女の人が飛びついた。
「もううーだめでしょーう!とおりん!ちっちゃくてみえなくなっちゃうんだからあ!もうもう!」
「重いっつーの、ちっちゃいっていうな」
「女の子に向かってなんて言い草なのおお!ゆきりんに言いつけてやるんだからああー!」

女の人の方が身長が高いだろうに、小っちゃい身体で支えている、その力はすごいすごいものだが、
小っちゃいの、
気にしてたのね。

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