天神楽の鳴き声
「雛ちゃんの好きな人、素敵じゃないー」
「好きな人ってわけじゃ、」
「えー?それだけ知ってて、褒めれて、こんな遠くまで来て思い浮かべる、だなんて。好き以外の何ものでもないじゃない?」

重そうな荷物を軽々と肩に抱え、からから笑う。
好き以外の何ものでもないじゃない?

雛生は口を尖らせながら、でも、と弁解する。

「友達みたいな好きかもしれないじゃないですか。私は、…自分の気持ちに自信がないんです」

そう、自信がない。
揺るぎないあの好意に触れる度わからなくなる。怖いような、緊張。この気持ちは何なのか、知りたいのか、知りたくないのか、それすらもわからない。
あの好意への返事を求められたら、きっと困ってしまうだろう。

「そんなものよ、好きだなんて理屈じゃないんだもの、いいなあ、の最上級よ、好きは。この世で一番大きいのは愛してる、だけれど。」

彰綺は雛生の前を歩いていたが、立ち止まり言った。

「痛いに理由がいる?零れ落ちるものを感情というのよ」

何時の間にか、西陽が眩しくなる時間になっていて、雛生は目を細めた。
ー…
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