天神楽の鳴き声
「ひなあああああああああー…っ」

天神楽の宮の執務室からは志臣の悲痛な叫びがこだまする。
「うるさいですよ、主上。ちんたらしないでください。彼女がいようと居なかろうと政務は溜まっていくんですからね!」
葉深は呆れたように五月蠅い、と一喝する。

「誰が為に涙は流れるのか、雛のためだよおおおおおおおおおおお!」

机を叩くが、誰にも相手にされない。空平ーぁぁと泣きつくが、

「すいません、主上、俺の胸は美しい女人の為にしか空いてないんすよ。主上は大変美しいですが、掘る趣味も掘られる趣味もないんで」

下ネタギリギリのことをぽんぽんいうのは、今執務室に男ばかりだからだろう。

「それはオレも一緒だよ!!ていうか、雛生限定、あんなに可愛い子天使以外の何物でもないっていうか!!近くによると、良い匂いが広がってねえー、あーひなぁ…」
「うわー、主上ずっと匂い嗅いでんすか?」
「おま、好きな子の匂いとか!!反応しないわけないだろお?!」
「いい齢こいて、思春期男子みたいな事ほざかないでくださいよー」

葉深は葉深で確かにあのころの欲求は凄まじいもんですよねーといいながら、書類に目を通す。童顔の葉深がいうと不似合いな感じだが、志臣と対して齢は変わらないのだ。

志臣は一応自分の沽券のために訴えておく。

「あの頃よりは!!理性に満ちた紳士ですから!!」
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