天神楽の鳴き声

「あの頃より、ふっつーにイロイロする只の野郎ですもんねー」
「すぐそーいうこという！雛には、オレは一歩前へ進んだ大人の男でありたいのー。だからこその紳士なのー」

「大人…の…？」
自信満々に胸を反って大人だからと高らかに叫ぶ。
二人は雛生を前にした時の志臣の対応を思い浮かべるが、自分達の大人像と一致しなさ過ぎて、は？と聞き返す。

「雛はイイコだからね、甘えさせてあげるんだよー」

甘えさせて、優しくしてあげる。
酷く臆病な、彼女。

父の言葉がふと甦る。
『余は、ー…俺はね、一人の男として、彼女に生きてて欲しかった。』

父は、母の亡骸を抱いて泣いていた。綺麗な綺麗な、魂だけを天神楽に喰われた母の亡骸は、父の涙を拭えずに、ただただ、静かにそこに在った。

朱巫女ー…
その使命は天神楽の為に祈り、舞い踊り、
そして次代の帝をこの世界へ産み落とすこと。

それが終われば、喰われ、この地を護る天神楽の養分と成れるのだ。

それは、誉高いことだ。