天神楽の鳴き声
「え…また葉深フられたのか…」
「うわああああ!なんで、空平さんが入ってくるんですかあああ!あと、なんでそんな話しってるんですか」

心底びっくりしたのか、葉深は間抜けな顔で空平を見上げる。ゲラゲラと空平は笑いながら、マジだったんだーと笑った。

「男の中で一番女官と仲良いの俺だからねー。まあ、大体のことはペラペラ話してくれるよ。女性はお喋りすきだから、てか、ようちゃんは女そっちのけで仕事しだすからいけないんじゃないですか?絲織(シオリ)さんでしたっけ?何回フられて、元サヤに収まったら気がすむんすか?」
「仕事が一番とは思ってませんけど!中途半端はよくないですから」

手に負えないとばかりに空平は肩をすくめた。絲織というのは翠官の名前で、付き合う、別れるを葉深が繰り返す相手だ。勿論別れてお互いに他の人間と付き合っている期間もある。

葉深は根が真面目で、仕事に対し一番実直だ。紅官内で仕事と結婚したら一番幸せになれるのにと、専らの噂で、大体の人間が呆れている。

「腐れ縁でここまで来ちゃいましたからね。…って、主上、その哀れんだ目やめてください」

志臣の可哀想なものを見るような、なんともいえない顔に葉深は噛み付いた。深妙な顔をして志臣は布と綿で作られた、髪だけが妙に真に迫っている、夜中に見たら気味が悪くて寝られなくなりそうな人形を差し出した。

「おれのお気に入りのかるちゃん人形をあげよう、きっといい恋人になってくれるだろう…」
「ああ、それって、かるちゃん人形っていうんですねって、馬鹿ですか!?あなたは!誰がそんな不気味な人形いるとおもうんですか?!」
「空平、どうして葉深は怒っているのか?」

こほん、と空平はわざとらしく咳払いをした。

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