天神楽の鳴き声
色決めは、着々と進んだ、それぞれ振り分けられた色の場所に向かう。胡兎は朱ではなかったらしいが、紅だったようだ。

「次、雛生さんですよ」

雛生は呼ばれて、ハッと顔をあげる。慌てて祭壇に行くまでの階段に登る。途中、躓くとくすくす、笑い声が沸く。いつもは気になってしまうのに、気にならない、昨日の事があっただろうか?

白いまっさらの紐を祭壇に置く。雛生は跪き、手を合わせた。この紐が染まった色にふりわけられるのだ。
パン、と弾けたように、一瞬光を灯した。


「この色、は…」
何色かを見る係りの人のただならぬ声に雛生は紐を見た。赤、だった。けれど、紅というには、橙に近い、そう、朱色だった。


「朱色の巫女様…」


一人の男がそう呟いて雛生に跪く。それから一人、また一人と跪いていく。ざわり、ざわりとその空気は波及していく。

朱色の巫女の誕生は新しい時代を意味する。
その事は数日の内に国中に知れ渡り、新しい時代の幕開けを人々は歓喜した。巫女が在位している時こそ、一番の繁栄の時と呼ばれるからだ。

吉日を選び、世に朱色の巫女の誕生を知らしめる誕生祭が行われることになった。
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