隣のマネージャーさん。
俺達がする会話の内容がわからない結愛は、しばらくの間ぱちぱちと瞬きをしながら俺や悠の顔を見ていた。
悠と夏川さんが去った後、結愛の腕を引いてしばらく黙ったまま歩いて、そして今。
結愛は何か勘違いをして、わけのわからないことを口にした。
本人曰く、抱きついたこととかで迷惑をかけたのかもしれないと思ったらしい。
むしろ嬉しかったんだけど……
……てか、断られたと思って一瞬ドキッとしたわ……心臓に悪いわ。
「そう、かあ……あー、良かったあ!!」
さっきまで不安そうな顔をしてた結愛は安心したのか、力が抜けたようにふにゃっと笑った。
……ふにゃっと笑うのは、初めて見たな。
「あれ?じゃあ、何の話?」
それも束の間。
すぐにけろっ、とした顔で首を傾げながら俺を見上げる。
あー、何か全部崩されたな。
「……試合の前だったか、休憩の時に言っただろ……試合が終わったら、伝えたいことがあるって。」
そう言うと、思い出したのか“あっ!!”という顔になった。
頭のうえに!マークが見える……
「そうだったね!!そっか~、あたしの勘違いか~‼︎」
恥ずかしいなあ、と言って顔を両手で覆って笑った。
そんな表情にさえ、俺の心臓は跳ねるんだ。
「……観客席、行ってみるか。」
「あ、うん!!」
ちょこちょこっと近づいてきた結愛を見て自然と頬を緩ませながら、俺達はまたゆっくりと歩き始めた。