隣のマネージャーさん。
「そのー、うーん……なんでさあ、俺がトップバッターなわけよ、部長ー!!」
さっきまでいいこと言ってるなあ、とか思ってたのに。
一気に俺達のタク先輩を見る目がいつものように冷たい色を含む。
「うるさいわねえ、部長と副部長は後。それにマネージャーの私がトップバッターってのも変だからあんただって言ったじゃない。」
「くそぅ……俺、こういうのあんまり得意じゃねぇのに。」
そう言って不機嫌そうな顔をするタク先輩だったけど、その手や肩が微かに震えていた。
「……俺は、部長や副部長みたいにバスケが上手いってわけじゃないし、全員のモチベーションを上手くコントロールするとか……そういうのが得意ってわけでもなかったし。」
いつもと違う、タク先輩の声色と表情。
「正直……やめようかな~とか、たくさん考えたんだよ、実は。でも……ヤスとダイが後輩になって、その後レジ達が後輩になって。気づいたら3年生になってた!!」
はは、と笑ってタク先輩は顔を上げた。
「気づいたらさあ、この体育館に毎日来るのが楽しみになってたんだー。嫌なことがあっても、辛いことがあっても、このメンバーとバスケすると全部忘れられるくらい、楽しくて……っ」
「タク……」
「うわー、カッコ悪、俺……でもさ、でもさあ~……っこんなに、寂しくなる、くらいさあ、このバスケ部が、このメンバーが大好きだったってことは、本当、だからさあ。インターハイまでいけて、ここまで、部活……してこれて、こんなに、幸せなことはないと思う!!!!みんな……ありがとう!!!!」
涙を流しながら笑って言い切ったタク先輩は、俺達を見てもう一度笑った。