恋衣 ~呉服屋さんに恋して~


 気が付くと、浴衣の胸合わせはほとんど開かれていた。私の肌が月明かりに青白く浮かびあがる。

「凛子さん……本当に、美しい。僕で汚してしまわないか、心配になる……」

 ふわりと体を持ち上げられ、敷かれた布団の上に寝かされる。熱くなった肌に触れたシーツがひやりと気持ちいい。

「あっ……恥ずかし……っ」

 肌蹴た浴衣を手繰り寄せていると、十夜さんが私の上に覆い被さり、その手首を取った。

「隠しては……駄目ですよ」

 月明りに艶然とした笑みが映し出され、その美しさに息を呑む。十夜さんの浴衣も乱れ、隙間から引き締まった胸元がちらりと見えた。

「もっと見せて下さい」

 細く長い指がするりと浴衣の胸元をなぞる。和装のブラジャーに包まれた二つの丘陵が露わになり、十夜さんの大きな掌がそれを揉み上げた。

「こんなところまで……大人になってしまって……」
「あっ、とうやさん……ッ」

 十夜さんは恍惚とした表情で胸を揉み上げながら、器用にブラジャーを取り払う。零れ出た胸を、円を描くように揉みしだかれ、指先で突起を弄られた。

「ぁんッ……!」
「少し、固くなってきましたね……」

 一つの突起を抓み上げると、側面を指の腹で擦り上げた。もう一方の突起は口腔へ含み、舌先でコロコロと転がされる。

「と、やさん……や、ん……」

 感じたこともない痺れにどうしていいかわからず、両足でシーツをかき乱した。
 十夜さんに乱されていると、浴衣は自然と開くような形になり、ショーツ一枚となった身体が彼の前にさらされる。
 いよいよ……だと思うと、少しだけ恐くなった。
 身体が強張り、内腿を擦り合わせていると、十夜さんがそっと頬に触れてきた。

「凛子さん……少し、緊張されているようですね」
「あの……っ、実は、初めて……で」

 この歳になって、未経験だなんて。口にするのも恥ずかしかった。
 恋らしきものはしたし、ひと時だが彼氏もできた。しかし、身体の関係までは踏み切れなかった。
 どうしても……十夜さんがいいと願ってしまったから。

「凛子さん……」
「あ、呆れますよね」
「いえ……とても、愛おしくてたまらない」

 十夜さんはそう言うと、頬に口付けをしてくれた。

「貴女を大切にしたい。だから、恐かったら……言ってくださいね」

 優しく言うと、擦り合わせていた内腿をそっと押し開いた。

「ぁッ……」

 十夜さんの指が太腿を撫ぜ、ショーツの上から秘裂に触れた。ピリリとする鋭敏な刺激に、背を跳ね上げる。

「大丈夫……ゆっくり、慣らしていきましょう」

 十夜さんはなだめるように言うと、ショーツの中へと長い指を潜り込ませた。すると、安堵したような息を吐く。

「よかった……」
「……え?」
「濡れています」

 クスリと笑みを零しながら囁かれ、羞恥で頬が熱くなる。

「も、恥ずかしいです……っ」
「すみません……僕で貴女が濡れてくれたかと思うと嬉しくて……」

 十夜さんの長い指は、濡れそぼった花弁を下から上へ何度も往復し、先端にある花芽を擦り上げた。

「や、あっ……!」
「ここ……感じますか?」

 感じる……とはこういうことなのか。
(頭がおかしくなってしまいそうです……)
 蜜を絡ませた指で擦られれば、より一層敏感になり、洩れ出る息が甘さを増した。
 静かな部屋にくちゅくちゅと水音が響き、耳まで弄られている気分になる。

「ゃっ……あッ……」
「その反応が、私を一層煽っていると、わかっていますか?」

 十夜さんは苦しげに呟くと、ショーツを取り払ってしまった。暑いはずの空気でさえ、もっと熱くなったそこには冷たく感じる。

「と……十夜さん……っ」
「綺麗だ……もう、誰の目にも、触れさせたくない……」

 十夜さんは秘裂を擦り上げながら、もう一方の手で胸を淫らな形に揉みしだいた。口で先端を含まれ、身体の奥が震えるのを感じる。
 秘裂を弄っていた指は花弁を縫うように進み、その奥にある濡れそぼったところへクチュリと沈められる。

「あっ、……っ」
「すごい、溢れてくる……」

 十夜さんの指が沈むと更に溢れる蜜。それはシーツを濡らし、私に蜜の多さを自覚させた。

「はっ、あっ、んんっ……!」

 十夜さんの指が一本から二本に増え、わずかに痛みが伴う。眉を寄せたことで気付いたのか、十夜さんが心配そうに見つめてきた。

「ゆっくり、力を抜いて……」
「ん……っ」

 十夜さんが優しく口付けをしてくれ、舌を絡ませてきた。
 その動きに集中していると、十夜さんの指が折り曲げられ、お腹の裏側を擦り上げてくる。感じたこともない快感が腰から喉へ突き抜けた。

「あぁッ……んっ」

 洩れる嬌声が恥ずかしい。手の甲を食んで口を抑えると、その手を十夜さんに取られてしまう。

「可愛い声なのだから……我慢しなくていいですよ。それとも抑えられないくらい、感じてもらいましょうか」

 腰を浮かされ、足を折り曲げられるとその間に十夜さんの顔が割って入ってきた。

「や、やぁッ……ダメ、とう、やさん! そんなとこ……あっ!」

 十夜さんの唇から赤い舌が伸び、外気にさらされた花弁を舐め上げる。ザラついた舌が敏感な花芽を擦り上げ、舌先で転がされると、身体が小刻みに震えた。
 十夜さんは舌を尖らせ、花弁の奥にある中心へと挿し入れた。浅い部分でざらざらとした感触がする。指より優しく、しかし官能的なそれに眩暈がしそうになる。

「んっ……次から次に溢れて……きりがない」

 十夜さんがどこか嬉しそうに微笑むと、熱く濡れそぼったそこに息がかかる。そして花弁を包むように唇をあてがい、ジュッと大きな音を立てて吸い上げた。

「や、やだ……と、やさ……んっ、」
「どうして?……もったいない」

 甘く艶を帯びた声音で言うと、ゆっくりと顔を上げた。卑猥な蜜が十夜さんの舌と絡んで糸を引いている。
 親指の腹でそれを拭うと、扇情的な顔で見下ろしてきた。額は汗ばみ、艶のある黒髪がさらに色香を醸し出す。

「まだ溢れてくる……凛子さん……そろそろ、いいですか?」

 その言葉に、ドキリと心臓が跳ねる。

「……はい」

 恐くないと言えば嘘になる。でも、それ以上に心も身体も、十夜さんを欲していた。
 私が頷くのを見ると、十夜さんは優しく微笑んで浴衣を脱いだ。

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