恋萌え~クールな彼に愛されて~
信じられない一言に梨花は今度は咄嗟に
ウソ!と声を上げた。
「嘘じゃない。2年前日米合同のプロジェクトがあっただろう?
それで何人かのスタッフとこちらに来て
しばらく滞在した時に君と会って……覚えてないか?」
2年前というと、全社上げての
大きなプロジェクトが立ち上がった頃だ。
梨花は産休に入った先輩の代わりに
急遽そのチームで庶務的な仕事の手伝いをすることになった。
しかし彼女が手伝ったのは
東京オフィスの人材が主体のチームだった。
まだキャリアも浅く、英語が不得手だったせいもあって
NYオフィスから来た人たちとはほとんど関わることがなく
そこに塚本が居ることも梨花は知らなかった。
「あなた、居たの?」
「ああ」
「気付かなかった!」
「まあ、当時はまだ新人に毛が生えたようなものだったし
経験と勉強と雑用の為に放りこまれたようなものだから
気にしてもらえる存在ではなかったかもしれないな。
注目される優秀な人材は他に大勢いたし?」
塚本から意味ありげな視線を投げられて
梨花は慌てて首を振った。
「そんな!……そういう意味じゃなくて」
「わかってる。冗談だ」
塚本はくすくすと笑いながら
梨花の頬を撫でていた手で彼女の頭を胸に抱えこんだ。
梨花の耳にトクトクと響いてくる塚本の胸の鼓動は
少し速い気がした。