恋萌え~クールな彼に愛されて~
一瞬の瞠目の後、目を閉じた塚本が
ふぅ と小さく吐き出した息を指先に感じた梨花は
慌てて手を離した。
「俺では… 駄目か」
「そうじゃないの。そうじゃなくて……よく…わからないの」
「そうか」
「ごめんなさい」
「謝る事じゃない。俺の方こそ悪かった」
塚本は梨花を抱いていた腕を解くと
彼女から少し離れて背を向けた。
「そろそろ帰ったほうがいい」
「え?あの」
「呑んでしまったから送れないのは申し訳ないが…
車を呼ぶから、それで」
「あ……でも、まだ片付けが」
「いや、後は一人で大丈夫だ。気にしないでくれ」
「あの」
「今日は色々とありがとう。助かった」
それまでとは一転した塚本の取り付くしまもない会話と
向けられたままの背中。
先に拒んだのは自分なのに、拒まれてしまったと思うと
梨花は胸の奥に張り裂けんばかりの痛みを感じながら
塚本が携帯を開いてタクシーを手配するのをただ呆然と見つめていた。
取り返しの付かない間違いを犯してしまったような焦燥感に
心を焼かれながら。