恋萌え~クールな彼に愛されて~
「でしょう?箱に押しつぶされそうよね?」
「ええ…まあ」
「ちゃんとキャパを考えて部屋を借りればいいのにね。
賢いんだか抜けてるんだか、わからんヤツ!」
あの塚本をわからんヤツだと言えてしまうだなんて
貴女は何様?と思う反面、それほどに理解し合い
信頼し合っているからこそ言えるのだと思うと
梨花は無性に悔しくなった。
そう言えば、そのわからんヤツである塚本の姿が見当たらない事に
梨花はようやく気付いた。
「あの… 塚本さんは」
「ああ、今 お風呂。もう出ると思うから。どうぞ座って?」
「お風呂?」
「動いて汗をかいたから気持ち悪いんですって」
体育会系のくせに割りと神経質なのよね、と
梨花に椅子を勧めながら彼女はまた笑った。
下着姿同様の露出度の高い姿の彼女に汗に…お風呂。
咄嗟にあらぬ妄想をしてしまった自分の恥ずかしさと浅はかさを
次の彼女の一言で思い知らされて梨花は頬が熱くなった。
「引越し屋に任せておけばいいのに、手伝うんだから」
そういうところがクニらしいんだけどね、と表情を和ませた彼女が
本当は従姉妹なんかじゃないとわかっていた。
彼女と塚本が昨日今日始まった間柄じゃないのも
言葉の端々から解った。今は恋愛関係でなくても
過去にそういう間柄だったのかもしれない。
―― 別れても好きな人 ――
そんなフレーズが浮かんだ梨花は居た堪れない気持ちになった。
来なければよかったと後悔したところに
薄手のコットンパンツと、上半身には広げたバスタオルを
肩から掛けただけの姿の塚本が現れた。