恋萌え~クールな彼に愛されて~
「でも 違ったんだ」
「違う?」
「身体は温め合えても魂が熱くなれない」
「?」


言葉の意味がよく分からなかった梨花は塚本の顔を黙って見つめた。


「そう茶々に言われたんだ。欲しいのは慈しみや優しさじゃない、と。
そんなキレイで優等生な愛なんて欲しくないと。
もっと腹の底から沸々とこみ上げてくるような醜いほどの欲望と
殺されてしまうかもしれないほどの激しく熱い愛が欲しいのだと…」


言われて俺も気付いたんだ、と遠くを見つめて塚本が呟いた。


塚本は茶々に好意はあってもそれ以上の熱情を感じた事はなかった。
飢えた猫のように痩せて震えていた彼女を
憐れむ気持ちがあったのは事実。
そして夢を叶える為にたった一人で国外に出て
殺伐とした放浪生活をしながらも
納得のいく「何か」を得る為に頑張る茶々の姿に
塚本は昔の自分を見ているような気がしていた。


肉親や友人と離れ、孤独に耐えながら
ただ高みを目指すことだけに全てを費やしていた学生時代。
励まし支えてくれる存在がどれほど大きなものかを思い知った。
どれほど思ったかしれない。誰かが側に居てくれたなら…と。


―― 彼女を護って支えてやらなくてはいけない ――


いつの間にかそんな使命感にも似た思いを
塚本は茶々に対して抱くようになった。
それを愛情だと思い込んでいたのなら、思い違いも甚だしい。
茶々の言葉がそれを塚本に気付かせたのだった。


< 39 / 48 >

この作品をシェア

pagetop