恋萌え~クールな彼に愛されて~
「俺たちはそれから二度と触れ合う事はなかった」

「そう…」

「誰かを愛するというのは茶々の言うようにもっと本能的で直感的で
抑えきれない想いに突き動かされるものだからな。昨日のように」


熱を帯びた塚本の視線を感じて焦った梨花は話の矛先を変えた。



「えっと…あの…茶々さんって、すごく情熱家なのね。穏やかそうに見えるのに」
「そうだな。華奢な見かけからは想像できないほど心身ともにタフで
とても純粋で敏感だ。だからこそ、芸術の世界で成功したんだろうけどな」


その茶々が転機を迎えたのは塚本との同居生活が8ヶ月を過ぎた頃だった。


チャンスは何処に転がっているかわからないもので
その切欠になったのはバイト先のカフェのメニューに描いた小さなイラストだった。
欧米のメニューは日本のそれと違い、写真も絵も入っていないごくシンプルなものだ。
暇な時間にカラーペンで何気なく描いた落書きの様なイラストが
たまたまレコーディングでNYに滞在していた日本のミュージシャンの目に留まり
その時にレコーディング中だったアルバムのジャケットデザインを
茶々に任せたいという話が舞い込んだ。


願っても無い事と茶々は二つ返事で引き受けた。


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