恋萌え~クールな彼に愛されて~
第九章 ~恋の萌芽~
好きだと自覚してしまったその後は
まるで坂道を転がり落ちていくように抑えきれない思いが加速し
塚本を独占したい思いが急激に膨らんでいく。
「じゃあ 今日はどうして・・・」
「ん?」
「どうして彼女は・・・此処に居たの?」
あんな格好で、の一言が言えなかった梨花は精一杯目で訴えた。
「昨夜遅くに突然やってきて、缶ビールの一本を空けきらないうちに
酔って寝てしまったんだ。イスタンブールから帰国して
成田からそのまま来たらしいから、きっと疲れていたんだろう」
「だから起こすのが可哀想になって泊めた?」
「そうだ」
この人の言動がとても人道的なのは分かる。でも…と
梨花はまたため息を落とした。
昨夜の事といいNYで茶々との同居を始めた時といい
女性を部屋に泊める事にあまりにも抵抗や警戒が無さ過ぎる。
塚本にやましい気持ちがなくても
もし相手にやましい気持ちがあったとしたら
何か厄介な事に成らないとも限らない。
そうでなくても女性と二人きりで一晩過したという話を聞かされるのは
理由はどうあれ、あまり好い気はしない。
何とも複雑な思いで黙ったままの梨花の様子に
何かを察した塚本が慌てて声を上げた。
「本当に泊めただけで何もないぞ?断じてない」
「わかってる。けど ・・・」
「なんだ?」
梨花は思った。これからも、例えば自分と付き合い出したとしても
こんな風に躊躇いもなくまた茶々を泊めたりするのだろうか?
本当にただ泊めただけであっても、何もなくても
それを嫌だと思う自分は我が儘で冷たい女だと
言われてしまうのだろうか?と。