恋萌え~クールな彼に愛されて~
塚本はくるりと椅子を半回転させ
梨花へと向き直ると、背凭れにゆったりと体を預け
足を組み左手でこめかみを押さえた。
そんな何気ない動作でさえ
恵まれたスタイルなだけに優雅にクールに決まる。
女の子たちが騒ぐのも無理は無いわ、と
冷静に彼を観察している梨花だって
実は心中、穏やかではいられないのだった。
「ちょっと・・・問題があるんだ」
「今度はなに?」
「棚が足りない」
「は?」
「造りつけの棚では収まりそうにない」
「棚?・・棚って本棚とか?」
「そうだ」
「なら、買いに行けばよかったでしょう!?」
「時間がなかった」
「休みがあったでしょう?」
「一週目は実家へ顔を出した。二週目は友人や恩師と会った。
その友人達と旅行に行ったのが三週目。
四週目は仕事の整理と関係者との会食で潰れた」
梨花は体から力が抜けていくようだった。
まるで宿題ができなかった言い訳をする子供のようだと
小さく噴出してしまった。
仕事になると一分の隙もないキレ者なのに
プライベートでは本棚一つ買う時間を捻出できないなんて…
ちょっと信じられない。
「自分の事は後回し?」
「まあな。別に棚に収めなくても特に困る事はなかったし」
「箱がゴロゴロしてて、邪魔でしょう?」
「どうせ今は寝るだけに帰る部屋だ。
もう少し日本での生活が落ち着いたら片付けるさ」
「なに悠長な事言ってるかな?明後日の追加で
落ち着く前に箱に埋もれて窒息しちゃうわ!」
「言えてるな」と笑った塚本の
午後の出張スケジュールを調整して
夕方の早い時間に空きをつくった梨花は
車をレンタルして、最近郊外にできた
大型ショッピングモールへ彼を連れ出した。