恋萌え~クールな彼に愛されて~
そこで二人は家具の店を見て回り
造りの良い大きな本棚と
組み立て式になっている本棚を購入した。
その後、社に戻るという塚本を制して
梨花は彼の自宅マンションへと向かった。
エントランス脇に車を止めてトランクルームに入れてきた
組み立て式の棚のダンボールを引き摺りだした。
そんな梨花の様子を、車のボディに身体を預け
腕組みをして眺めていた塚本は
「意外に力持ちなんだな」と微笑んで
梨花の手からひょいと荷物を取り上げた。
「このくらいが持てなきゃ、一人暮らしはできません」
「そうなのか?ご両親と一緒じゃないのか?」
「両親は山に隠居したの」
梨花の両親は彼女の父親が定年を迎えたら
故郷である土地に戻って余生を過す事を強く望んでいた。
末っ子の梨花が就職して2年目に
父親が一足早く依願退職をして
都内の実家を処分し、その望みを叶えたのだった。
「ご両親は今、何処に?」
「信州。諏訪湖の近く」
「いいな。八ヶ岳が近い」
「帰省する故郷ができて、ちょっと嬉しいの」
「ああ、それは俺も分かる」
そう目を細めた塚本の
今までに見たことが無い穏やかな微笑みに
胸の奥がざわめきだし
落ち着かない気持ちになった梨花は
慌てたように「じゃあ、また」と小さく頭を下げた。