恋萌え~クールな彼に愛されて~

ダンボール箱のほとんどは書籍が詰まっていた。
和書に洋書、ビジネス書に図鑑のような写真集もあれば
趣味なのだろうか?釣りに関する雑誌もあった。


幅が5センチはあろうかという分厚いファイルは
ざっとかぞえただけでも50を軽く越えた。
これはMBA取得のために受けた授業の資料だという。
この上、明後日の便で留学中に使った
学術書の類が追加になるという。


「図書館で借りれば済むようなものでも
結局気に入ると買って手元においてしまうんだ。
一部、実家に送ろうかとも思ったんだけど、できなかった」と
塚本は愛しげに取り上げた一冊の表紙を撫でた。


「好きなのね、本」
「ああ」


手にしていた本を開き
文字を辿り始めた塚本の視線に気付いた梨花は
慌てた声を上げた。


「あの!」
「ん?」
「今読むのはどうかと思うわよ?」
「え?・・ああ、そうだったな」


本を閉じ、作業に戻った塚本の背中を見ながら
梨花は(これじゃなかなか片付かないわけだわね…)と肩を竦め
次の箱を開いた。



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