はじめてを、おしえて。


しかし、足音は無情にも近づいてきて……


ドカン!!


ボクのいた個室のドアを、蹴り飛ばす音が響きました。



「おい、エヴァン下痢女」



ついていってあげるから、と言った女子の低い低い声が、ボクを呼びます。


全開にした心の壁は、もちろん何の意味もなしませんでした。



「調子に乗ってんじゃねーぞ。

藤原はお前に同情してるだけだからな」



それだけ言うと、全ての足音はトイレから遠ざかっていきます。


ボクは恐怖で震える体を、立ち上がらせることができませんでした。


チャイムが鳴るまで、ずっと。


今までは、『無視』ですんでいたものが、『敵意』に変わるのを、ボクは見てしまいました。


それに加え、『同情』という言葉が、ボクの足を呪縛したのでした。



< 106 / 244 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop