はじめてを、おしえて。
しかし、足音は無情にも近づいてきて……
ドカン!!
ボクのいた個室のドアを、蹴り飛ばす音が響きました。
「おい、エヴァン下痢女」
ついていってあげるから、と言った女子の低い低い声が、ボクを呼びます。
全開にした心の壁は、もちろん何の意味もなしませんでした。
「調子に乗ってんじゃねーぞ。
藤原はお前に同情してるだけだからな」
それだけ言うと、全ての足音はトイレから遠ざかっていきます。
ボクは恐怖で震える体を、立ち上がらせることができませんでした。
チャイムが鳴るまで、ずっと。
今までは、『無視』ですんでいたものが、『敵意』に変わるのを、ボクは見てしまいました。
それに加え、『同情』という言葉が、ボクの足を呪縛したのでした。