はじめてを、おしえて。


結局、放課後までそれ以上の攻撃はありませんでした。


授業が終わるや否や、ボクは美術室に逃げ込みます。


敵は複数ですが、人前ではボクを攻撃しないであろうことがわかっているからです。


彼女達は卑怯であり、狡猾です。


そしてボクはそれに輪をかけて臆病なのです。


美術室にはいつものようにイラストなどを書いている美術部員がいるので、ここまでわざわざボクを追ってくることはないでしょう。



「おお、斉藤殿。例の原稿はできましたか?」



オタク部員の一人が声をかけてくれます。


ボクはそれだけで、ほっとしました。



「まだ……昨日は、忙しくて」



彼女達の集まる一角にイスを動かし腰かけると、その中のひとりが「あっ」と声を上げました。


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