はじめてを、おしえて。
ボクはとぼとぼと、帰り道を一人で歩きます。
わざと柔道場の方へ回り、その前を通ろうとしました。
もし柔道部がまだ活動していたら、藤原くんを一目でも見ていこう。
そうすれば、元気がでるはずだ。
そんな不純な動機を持って歩き、自転車置き場にさしかかったときでした。
「あっ、斉藤ちゃん!」
「里美先輩!」
前から、里美先輩と晴人師匠が歩いてきたのです。
二人の姿を見ただけで、ボクの涙腺はゆるんでしまいそうになりました。
「わあ、顔、変わったね!
髪も切ったの?
可愛くなったよ、斉藤ちゃん!」
里美先輩は屈託のない笑顔を向けてくれます。
そうです、ボクは髪が多くてすぐボサボサになるので、前の休みに髪を切ったのでした。