はじめてを、おしえて。
「そっか……これからなんだね」
「うーん、どうでしょう?」
「ミスターか。がんばれよ、斉藤」
「斉藤ちゃん、また今度ゆっくりお話しようね?
今日は塾があるから、あたし行くね」
はい、とうなずくと、里美先輩は小走りで駅の方へ駆けて行きました。
「……送ってあげなくていいんですか?」
師匠に聞くと、彼はこちらを見て苦笑いを浮かべました。
「お前、なんかあったって顔にかいてあるぜ?」
「ええっ?」
「あいつは受験生で時間がない。
代わりに話を聞くぐらいなら、俺でもできるけど?」
なんと。
師匠がボクに気を使ってくれている。
しかも里美先輩も、師匠がボクのところに残るのを当然と思って、一人で行ってしまったのか。