はじめてを、おしえて。
「斎藤さん!」
「は、はい!」
急に名前を呼ばれ、ボクは勢い良く立ち上がります。
慌てていたため、机にヒザがガゴンと当たりました。
周りは、冷ややかにボクを見ています。
「斎藤さん、続きを読みなさい」
現国のおばさん先生は、ボクがどこからが『続き』かわかっていないのを知っていて、そう言います。
「……すみません、聞いていませんでした」
「全く……誰か教えてあげなさい」
先生は、意地悪くそう言います。
普通の子なら、隣の席の子がそっと教えてくれるのですが。
ボクはオタクのため、四面楚歌。
『続き』を教えてくれる人はなく、また、ボクも誰にも、聞けませんでした。
気まずい沈黙が流れます。
先生はやっと事態に気づいたのか、
「69ページから」
と、静かに言いました。