はじめてを、おしえて。


藤原君が、身体を離し、ボクを見つめます。


「あのさ……」


「はい?」


「下の名前で呼んでもいいか?」


「あ、はい。斉藤の下はみちる、と申しますです」


「アホか。同じクラスなんだからそれくらい知ってるよ」



と笑いながら、藤原くんははた、と何かに気づいたような顔をしました。



「もしかして、俺の下の名前知らない……とか?」


「知ってますよ!!名簿くらい、見ますから!!」


「あー良かった。ちょっとへこむとこだった」



それくらい知っていますよう。


藤原くんは樹(いつき)くんと言うのです。


真っ直ぐで大きくて、キミにぴったりだなあと、思っていたのです。



「みちる、な。

お前も名前呼びしてみろ」


「うーん……じゃあ、いっくん?」


「……照れ隠しにしては最悪だ。

それ、小学校までのあだ名なんだけど」



藤原くんも照れたようで、首の後をぽりぽりとかきました。


< 198 / 244 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop