はじめてを、おしえて。


「………なんだ」



市川さんはボクの姿を認めると、すぐに手元の本に視線を戻してしまいました。


文芸部は、自分達の作品をまとめた部誌を売っているみたいです。


それだけではなく、古本を集めて売るというリサイクルコーナーもありました。


黒板には、市川さんが描いたと思われる、萌えキャラのイラストがあります。


部誌や古本は、見たところそこそこ売れているようでした。


しかし、市川さんが座っているイスの前の机に置いてある、

彼女自作の同人誌やグッズは、きれいなままビシッと並んでいました。


おそらく、売れてないのでしょう。



「……一人、ですか?」



ボクはおそるおそる市川さんに話しかけました。


市川さんはボクを無視します。



「一人じゃ、忙しくなったとき大変でしょう?

もしかして相方さんはお手洗いとか……」


「うるさいですぞ!!」


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