はじめてを、おしえて。
ちょっと前までひとりぼっちだったオタクのボクは、大勢の前に立つのが苦手なのです。
どうしようとおろおろしていると。
野次馬をかきわけ、見慣れた人が出てきました。
「なにしてんだ、みちる」
「いっくん!!」
それは、呆れた顔で、クラス展示のお化け屋敷の狼男の気ぐるみを着たままのいっくんでした。
ケモノ耳……しっぽ……萌え!!
「萌えー!!」
「学校で萌え萌え言うな。
どうしたんだ、何かトラブルか?」
「いいえ、違います。
早く逃げましょう」
「え?ああ、うん」
ボクは市川さんに会釈をすると、いっくんと共に野次馬をかきわけて逃げました。
別に誰も追ってこないというのに。