はじめてを、おしえて。


「走れ!」



いっくんは、ボクの手を引き、走り出しました。



ボクは――。



涙がにじんだまま、その背中についていきました。



「いっくん、王子様みたい……」



途中で落とした絵を回収し、自転車置き場についたボクが、本心からそう言うと。


いっくんは、鬼のような顔で、怒りました。



「バカ!!のんきすぎるだろ!!

なんでついてったんだ!!」


「あ……無理矢理連れていかれて……。

あのおじさん、警察官で、抵抗したら、ボクを補導するとか、言うし……」


「そんなん、嘘に決まってるだろ!!」



……え、そうなの?


そうなんだ……。そう言われれば、そうだよね……。


自分のバカさ加減に涙が出ました。


いえ……。


怖かったのです。


ボクは、本当に怖くて、冷静な判断が、できなかったのです。


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