はじめてを、おしえて。
「う……っ、おうっ、おう……っ」
またオットセイになったボクを、いっくんは自転車の後ろに乗せて、全力でこぎだしました。
そして、言います。
「あー、漏れそう!
だからトイレに行きたかったのに!
あのクソジジイ!」
あぁ……。
偶然だったのだな。
ボクは本当に、いっくんが王子様に見えました。
でも。
本当は、校外で、人を投げ飛ばしたりしたら。
絶対、ダメだったのだ。
柔道部にいられなくなったかもしれないのだ。
大好きな柔道が、できなくなったかもしれないのだ。
それでも、ボクを助けてくれた。
「ごめんね……」
ボクは、いっくんの背中に顔をすりよせました。
いっくんの背中は、汗と太陽のにおいがしました。