はじめてを、おしえて。
下駄箱で、靴を脱ぎます。
上履きに履き替えていると、不意に後ろから声がかかりました。
「……おっす」
ビク、と背中が震えました。
藤原君だ……。
見なくても、わかります。
同じクラスでボクに挨拶してくれる人なんて、彼しかいないのですから。
「あのさ、この前……」
藤原君が何かを言いかけました。
「もう、話しかけないでください」
ボクは必死でそれだけ言うと、彼の顔も見ずに、教室へ走りました。
慣れない靴で走ったため、筋肉痛になった全身を、叱咤して。
ボクは、藤原君から逃げました。