andante
病院について優ちゃんは今、治療を受けている。
ずっと黙っているわたしに千広くんは困ったような顔をした。
「…なぁ、比菜」
病院の廊下に低い千広くんの声が響いた。
「…なに」
「なんで千広に弾かせた?」
ドクン、と嫌な胸騒ぎがする。
「…わたしだけなの?千広くんは優ちゃんが弾かない理由、知ってるんでしょう?」
わたしはイライラしていたのかもしれない。
どうして教えてくれないのか。
それでいて、どうして悪いのはわたしなのか、わからないから。