andante
「…優ちゃん」
「…ん?」
じっと優ちゃんを見上げた。
「…わたしを見ると辛い?」
聞くのは、怖かった。
“辛い”
そう言われても仕方ないってわかっているから。
だけど優ちゃんは笑った。
「辛くなんかないよ。」
「だけど、優ちゃんはわたしのせいでピアノ……、」
「僕はあの日、比菜ちゃんを庇って何も後悔してないよ。」
「…嘘、」
「もし、比菜ちゃんがあのまま車にぶつかってたら僕がピアノが弾けたって聴かせられなかったかもしれない。」
確かに優ちゃんがいなかったら今頃わたしは………
「比菜ちゃんがくれた夢だったから、叶えたかった。叶えられないのは辛いけど、比菜ちゃんがいなくなるよりは耐えられる。」