andante
第二章
今は何も望まないのに
「比菜じゃん」
次の日、大学でそう声をかけられた。
「千広くん?」
にかっと笑ったのは間違いなく千広くん。
金髪の髪の毛は風で靡いてる。
ファーのついた黒のダウンジャケットにジーンズというシンプルな格好なのに、なんでこんな派手なんだろ?
それはきっとこの端正な顔のせいなんだろうけど…
「なんで疑問系なわけ?」
「…いや、ひさびさにみたから。」
「は?ずっと見てたよ、俺は。比菜が話しかけなかっただけだろ?」
え……
千広くん、ずっと大学来てたの?
「…優一、帰って来たらしいからさ。」
だからわたしに話しかけたのか。
「知ってるよ。」
意外、というような顔をする千広くん。
知らないって思ってたのかな?