andante
あの信号をこえたらもう、家についてしまう。
ぎゅっと膝の上で握りしめた手は熱く、まるでこのまま離れたくないような、そんな気持ちをあらわしているみたいだった。
「…比菜ちゃん」
すると優ちゃんがわたしを呼んだ。
「明日からレッスン指導だからさ、会えないんだ。」
会えないんだ…
そっか、
本当はすごくショックだけど、わたしの気持ちを悟られないようにわざと笑って見せた。
「そっか!頑張ってね、優ちゃん。」
わたしは彼女じゃない。
悲しむのはおかしいでしょ?
妙に物わかりのいい自分。