青になるまで待って
それは時差信号だった。
反対側の信号が赤になっても、次に青になるのは対抗車線であり、こちらの車線が青になるまで少し時間がかかるのだ。
運転手は気の弱そうなくたびれた中年男。その言い分は「急いでいた」というありきたりなもので、免許証を照会しても、車内を検索しても不審な点は無かったので切符の処理をして帰した。
「ふうー」
助手席の警察官が疲れとも安堵ともとれない息をついた。
「さっきの人不倫してんのかな」
ハンドルを握っている警察官に話しかける
「なんで?」
「怯えてた。青切符と引き換えにしても早く帰らなきゃいけないぐらい修羅場になってるんだよ。怖い奥さんなんだよ」
「……。」
「俺はそんな事しないから安心してね」
「うるさい。当たり前よ」