死神の涙




「そんな顔するな、死神さんよ。」
「……お話ぐらいなら付き合えますが?」
「そりゃいいな。いい退屈しのぎだ。」



まぁ座れよ、と近くにあった椅子を指す。

平気なんですけどね、とソイツは笑った。



「上條 貴志(カミジョウ タカシ)さんで間違いないですよね?」



黒い手帳片手に確認をしてくる。
俺は無言で頷いた。



「さて、何の話をしましょうか?」
「その前に死神さんには名前なんてものはないのかい?」
「一応ありますが……」
「死神じゃ不便だ。教えてくれよ。最後なんだしいいだろう?」



少し視線を泳がせ悩んだ後、ソイツは微笑んだ。



「アイと言います。もう誰も呼んでくれる者はいませんけれど。」
「いい名前だ。男なのに珍しい…ん?死神に性別なんてあるのか?」
「どうでしょう?姿は自由に変えられるので。この姿が一番落ち着くのですが」
「便利な体だな。」



笑ってやるとアイも頬を緩ませた。



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