死神の涙
「上條さんの話を聞かせてください。」
「俺か?俺は語れるような何かを持ってないぞ。もう何年もこの部屋の中だ。」
過去を思い出しても、白い部屋しかない。
「つまらない人生さ。」
「寂しくなかったですか?」
「愚問だよ。慣れてしまった。」
最初こそ寂しかったのかもしれない。
今じゃ全く感じない。
「こうして言葉を話すのさえ久しぶりだ。もう少しで言葉を忘れるところだった。」
笑うところだろ、と思ったのにアイは眉を寄せただけだった。
「同情ならいらないよ。今のは笑うところだ。」
「笑えませんよ。」
「アイは優しいんだね。優しい死神、面白い。」
ほめ言葉のつもりが、アイは酷く傷付いた顔をした。