死神の涙
「優しくなんてありませんよ。人の命を奪うことが仕事なんですから。」
「奪いたくないような言い方だ。」
「そうですよ。僕は人の命を奪うのは嫌だ。」
死神のくせに、なんてことを言うんだ。
眉尻を下げる表情は一人の人間のようだ。
何ら変わりはない。
「どうして嫌なんだ?」
「今まで何十人もの命を奪いましたが、僕は……彼らの顔を忘れられない。罪の意識が消えないんです。」
アイは両の手を握り締めた。
「アイが命の時間を決めた訳じゃない。」
「だとしても、時間を止めるのは僕です。」
きっと彼は命の尊さを知っているんだ。