どっちも…
長い長い、キスの後。



「…ちょっと。トイレ行ってくる。ここにいてね?」


私はカバンを彼に預け。
トイレに向かう。

“振り”をする。


向かうのは、トイレなんかじゃないから。
私が向かうのは…。



「ごめん!待った?」



もう一人の。



「いや。いつもと同じくらい」



死ぬほど好きな、人の所。



「アイツは?」

「ん。カバン預けてきたから、大丈夫」

「そっか」

「ん。会いたかったよ…」

「俺も。すげー会いたかった…」



彼と同じ。
甘く響く低い声。

彼と同じ。
吸い込まれそうな瞳…。


そう。
彼がいるのに。
もう一人の、私が好きな人は……。

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