狼と銀の鳥籠姫
第一章
雨上がりは、塔の少女に始まりを照らす。
「まだ……、雨はまだ止まないのかしら?」
そわそわと部屋の中を歩き回っていた私は、窓際のソファへと膝を乗せて窓の外をうかがってみる。
今日だけで、こうするのはもう何度目のことだろうか。
ぼんやりと薄い雲のヴェールがかかったような空からは、今も細かい霧のような雨が降り続いている。
――きっと、今日中には止む。……はずよね。
雨雲は薄く、雨粒だって決して大きくはない。
土砂降りでもない。
それに何より、向こうの空雲からはすでに光が差しているのだ。
雨がそれほど長く続くとは思えない。
そう考えているとドアの向こうから、タッタト軽やかなリズムで走ってくる音がした。
「お嬢さま、雨、止みそう? 早く止んでほしいよ。雨は嫌だぁ~」
「そうね……。もう少ししたら止むかもしれないわね」
可愛く頬を膨らまし犬の姿をした子に返事をし、私は声のした方向へ視線を落とす。
私が支えにしていたソファに前足をかけ、窓の外を見やろうとしているのは、
犬種の兄妹の兄、ルインだ。