ちょっとだけよ?
「お願い加藤さん!ちょっとだけでいいから!!」


送別会の帰り、たまたま一緒に帰っていたその日の主役に突然腕を掴まれそう言われた。


「ダメだよ!彼氏に怒られちゃう……」


場所は送別会場の歓楽街からほど近いラブホテル密集地、につながる路地。

「こっちが近道だから」なんて言われるままついて行ったらこんな所に来てしまった。


「彼氏がいることは知ってるけど、海外に行ったらもう会えないから最後に……駄目かな……」


大の大人が今にも泣き出しそう


「最低なお願いだって分かってるよ。でも俺、ずっと加藤さんに憧れてたんだ……。綺麗だし、スタイルいいし、優しいし、仕事も出来るし、笑顔が可愛いし……」


赴任先はシンガポールって言ってたっけ

体のいい人減らしだという噂もある

断ったら死んじゃうかな

酔っているせいか、ちょっと可哀想になってきた。


「……じゃあ……ちょっとだけ……本当にちょっとだけだよ?」
< 2 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop