ALONES
「…読む?」
「だから読めないわよ。」
知ってるのにいつもワザと言う。
だから、私はアルの髪の毛を強引に引っ張って、押し殺した声で言ってやるの。
「海底に引きずり込んでやるわ。」
「……目が本気だよ。」
でも、そんな会話ですら楽しくて、幸せで。
冗談よと笑ってアルの隣に座ると、彼は不意に「ここにさ、」と国報紙の一記事を指差した。
「何?」
私は興味津々に覗き込む。
勿論なんて書いてあるのかは分からないけれど、アルは静かに紅茶を飲みながら、私を見た。
――びっくりするよ。
と言わんばかりに。
そしてティーカップを置くなり、彼は平然な態度のまま、こう言った。
「どうにもこうにも、1年前に僕は死んでいるみたいなんだ。」
――――ん?
死んでる?