ALONES
「…何言ってるのよ、アルは死んでないわよ。」
真顔でそう答えれば、彼は何が面白いのか、はははと笑うと、
「まあそうなんだけど。」と呟いて。
「この記事が正しければ、事実上、僕は死んだことになってる。
そもそも5年前、僕は“多国留学に行った”事になってるし。そして、一年前に“帰国途中に不慮の事故に遭って死んで”、もうとっくの昔に葬儀も済んじゃってる。」
いやあ、見事だねとまたアルは紅茶を飲む。
ちょっと待った。
―いやあ、見事だね、じゃないわよ。
思った瞬間、グッと顔に火が付くような感覚に襲われて、気が付いたら壊してしまいそうなほど強く、オンボロ机を叩いていた。
「あなた馬鹿なの?」
私の気迫に驚いたのか、アルはビクッと肩を震わせ私を見るけれど、もう止まらない。
「何呑気に紅茶なんか飲んでるのよ!まだアルは生きているのに“死んだ”事になっているのよ!?とんだ捏造よ、嘘ばっかりだわ!それにアルに対して失礼よ…!」
思わず彼が飲んでいた紅茶をひったくり、全部飲み干して…ティーカップを割る勢いで机に叩きつけてしまった。
…結局、割れなかったけれど。
「私が今からオルフィリアに行って国王をぶちのめしてきてやるわ…!」
ふん、と鼻息を立てて腕をまくり、怒りに燃える私。