ALONES
けれどそんな人魚(きみ)は―――。
やっぱり少し変わっていたんだ。
「ちょっと待った…!」
荷造りを進める手を止めて、声を張り上げた。
え、なに?と言わんばかりの表情を浮かべ、僕を見上げるキーラの手元には、彼女専用のトランクケースがある訳だ、が。
「なにそれ…。」
そこに入っていたのは衣類でも、日用品でもなんでもなくて。
黒い物体。
強烈な磯の香りがする、黒くて、もじゃもじゃした、その他数種類の何かしらが、トランクいっぱいにこんもりと積み上げられていて。
一体どこから持ってきたんだと言いたくなるくらい、それらの存在感は計り知れず。
でも、キーラは言う。
むすっとした表情で、当たり前のように言う。
「…何って、海藻じゃない。」
か い そ う ?
「は?」
「だから海そ…」
「…え?」
「海藻だって言ってるでしょ!」