ALONES
「なんで…!?」
思わず叫ぶ。
「…なんで海藻が要るんだよ…!」
おかしなやり取りだとは分かっている。
けれど、どう考えてもこれはやっぱり変だ。
人魚の常識なのか知らないが、僕の言葉で火が付いた彼女は、その海藻を引っ掴み僕に突き付ける。
「馬鹿ね!あなた海藻の良さを何も分かっていないわ!
この“海藻1”はね、肌にいいのよ!それからこの“海藻2”は中々便が出ない時に食べるといいのよ、そして“海藻3”は、」
「説明はもういい!
ってゆうか海藻の名前は!?海藻の名前は番号なの!?…肌にいいとか正直よく分かんないよ…!」
こんなに強く言ってはダメだと思いながらも、どうしても抑えられなくて、
案の定、キーラは「…だって、知らないし、名前なんて、」とべそをかき始める。
料理と言い、なんというか、人魚の生活と人間の生活の違いをまじまじと見せつけられているようで、暫く項垂れるしかなかった。
とはいえ、酷い事を言ってしまったと後悔はしている訳で。
泣きべそをかくキーラに向き直って、僕は小さく呟いた。
「ごめん、少し言い過ぎたよ。…でもキーラ、僕たちはこれから街に行くんだ。そこで綺麗なお姉さんのトランクから、物凄い海藻の臭いがしたらどう思う…?」
潤んだ青い瞳を僕に向け「それはちょっと、」と言う彼女は…どうやら僕の言い分を分かってくれたらしい。